● 家庭血圧のこと(当院通院中の方へ)(2024年9月更新)
まとめ 血圧はストレス等のちょっとしたことで変動してしまうので、月に1~2回測る診察時の血圧では本当に安定しているのか判断しにくいものです。より適切な血圧の評価、降圧剤の内服方法を決めるには家庭血圧測定(特に早朝血圧)がとても役に立ちます。可能な方は是非とも家庭血圧を測ってみて下さい。
<家庭血圧の測り方>
家庭血圧を測定して頂ける場合には、➀上腕で測るタイプの家庭血圧計が一番信頼できます。②まずは脳卒中や心筋梗塞などの発症に大きく影響する早朝血圧を測定してみてください。➂早朝血圧の測り方(下の図)は、起床後のトイレを済ませた後早めのタイミング(朝食前)に、数分程度座位で安静にした後、座って測定。(※布団を畳んだ後や炊事・洗濯の後に測ると、これらの「労働」により血圧が変化する可能性があります。)出来れば1回の測定につき2~3回位続けて測ってください(1回目が最も数値が高めで、2回目・3回目で下がってくることが多いので)。また、たまにでいいので、就寝前(入浴前または入浴後2~3時間経ってから。晩酌する場合は晩酌前または晩酌終了後2時間程度経ってから)にも測定してください。家庭血圧の値を血圧手帳や紙にメモして頂き、診察時に見せていただければ投薬治療に大変役立ちます。
<家庭血圧の考え方>
大切な事は1回1回の血圧の値の変化に一喜一憂しないこと。自覚症状がなければ時に100~140代程度の間で上がったり下がったりすることは「生きている証」と考えて頂ければ結構です。高い血圧や低すぎる血圧が続くなら薬を調整します。(※血圧はストレスがかかると上がります。しばしば見受けられる2つのパターンがあります。)
①何の症状もないけれど夜血圧を測ったらいつもよりも高い→血圧が高いことに対する不安がストレスになり→交感神経が緊張→末梢の動脈が縮み(=手足が冷たくなる)脈拍が増え(=動悸がする)血圧が更に上がる→その血圧を見て更にストレスがかかり血圧が・・・。②何となく調子が悪い→調子が悪いことへの不安がストレスになる→交感神経が緊張する→とりあえず血圧を測ってみる→血圧が上がっている→血圧が上がっていることに驚き、更にストレスがかかり血圧が・・・。①の場合は夜の血圧測定をやめて、早朝血圧だけにしてみてください。朝高いのなら、その日に外来受診や電話問い合わせで問題がなくなると思います。②の場合は、調子の悪い時に自分で血圧を測らないことです。調子の悪い時に自分で血圧を測っても問題解決には繫がりません。調子が悪ければ受診してください。
<家庭血圧を測って得すること>
家庭で御本人に測って頂く血圧の利点。
(1)普段の状態に近い血圧値を知る事が出来る。検診時や診察時に測るような精神的ストレスが少なく、比較的リラックスした状態で測れる事が多いので。
(2)一定の測定条件にしやすい。診察時の血圧は、空いていて来院直後(≒運動直後)の測定、長い時間待たされた(安静後 又は待たされてイライラ中)時の測定、血圧の薬を内服して数時間後の測定など条件がいつも違ってしまいますので、その血圧の数値がいつもの血圧値なのか、たまたまの血圧値なのかを捉えにくいことがあります。
(3)測定回数(日数)が多いので一定期間内で血圧が平均的にどの程度かが分りやすくなる。例えば家庭血圧は毎日朝1回測れれば4週間で28回、2日に1回でも4週間に14回の血圧値が分ります。4週間に1回だけの診察時の血圧では平均的な血圧を見ることは残念ながら難しいのです。
(4)起床時(一番重要な時間帯)の血圧を知る事が出来る。(起床時の血圧が高いということは①目が覚めた途端に血圧がドーンと上がっているか、②夜中から朝までずっと高血圧のままなのかのどちらかです。両方とも脳卒中や心筋梗塞を起こしやすくする放置していると危険な状態です。
(5)1日の大まかな血圧の変動(起床時・寝る前)も分かる。起床時の血圧と(たまに)就寝前の血圧を知る事が出来れば、薬の量の増減のみならず内服時間の変更などより細かい薬の調節が可能になります。
当院では、忙しくて測る時間がない、自分で測ると逆にストレスになるなどの問題がなければ是非測って頂きたいと考えています。
※家庭血圧を測るとこんなことも起こります の一例
下の図イ(縦軸に血圧の高低、横軸に時刻を示します)は朝1回血圧の薬を飲んでいて、午前中の外来血圧が安定している例をグラフにしたものです。朝、血圧の薬を飲んだ(薬の絵の↓)あとは血圧が正常まで下がっていますが、実は効果が持続せず昼過ぎから翌朝まで高血圧が続いてしまっています。高血圧が持続する為、心臓・腎臓などに負担がかかり、動脈硬化も進みやすい危険な状態です。
しかし、朝の内服後、血圧の薬が良く効いている午前中に外来で血圧を測る(下の図ロの赤いバツ印)と、「いい血圧です。」と判定されます。
そこで朝と寝る前の家庭血圧を測ってみる(図ハの黄色い□印)と
1日の中での血圧変化が見えてきて(図ニ)、
起床時や夜の血圧を下げるために「薬を飲む時間や量を変えてみましょう。」と判断できます。 |